日本人が歯を失う原因「1位」は歯周病です

歯周病は、「歯科の二大疾患(むし歯・歯周病)」のひとつです。現在、歯周病は、日本人の歯を失う原因の1位となっています。40歳くらいまでは、むし歯で歯を失う傾向が強く、40歳以上になると歯周病で歯を失う傾向が強くなります。歯周病はギネスに人類史上最も感染者の多い感染症として認定された病気ですが「歯ぐきから血が出たりする病気」などと軽く考えられがちでもあります。しかし歯周病は、歯を支える骨が失われていき、最終的には歯を失ってしまう恐ろしい病気であるだけでなく、「糖尿病」「脳疾患」「心臓疾患」「腎臓疾患」といった全身疾患とも密接な関わりのある病気です。以下のグラフは「平成30年(2018年)11月の公益社団法人8020推進財団 第2回永久歯の抜歯原因調査」よりの永久歯の抜歯原因に関する数値です。

抜歯原因グラフ
抜歯原因グラフ

30代以上の日本人では3人に2人が歯周病またはその初期状態

15歳以上・永久歯 ~ 歯周組織に所見ある場合を歯周病とする「平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)」によると、歯周病の有病率は、30代~60代の率が高く、30代以上では、3人に2人が歯周組織の異常がみられます。

歯周病では歯を支える骨が溶かされます

歯周病では歯を支える骨が、歯周病菌の出す毒素によりどんどん溶かされていってしまいます。歯周病菌は「嫌気性細菌(けんきせいさいきん)」で空気を嫌う細菌であるため、空気の薄い場所を求め歯周ポケットのより深い所へと入り込んでいき毒素を出します。歯を支える骨はこれから逃げるように退縮していきます。

歯肉炎

歯石や歯垢がたまり歯肉が赤く腫れてきます。歯磨き時の出血することもあります。 

歯周炎(初期)

歯茎の腫れがだんだん大きくなり、歯を支える骨(歯槽骨)も溶け始めます。 

中等度歯周炎

歯槽骨が溶けて歯が動揺します。歯肉も赤く腫れて口臭や不快感も出ます。 

重度歯周炎

歯肉は化膿し歯根も歯石で覆われ、歯槽骨は歯を支えるのが困難になります。 

静かなる病(サイレントディジーズ)

歯周病は「サイレントディジーズ(silent disease) = 静かなる病」と呼ばれており、痛みなどの自覚症状が無いまたは乏しいまま進行していくやっかいな病気です。自覚症状が無いまたは乏しいので、歯周病に罹っていることに気づかず、気づいた時には重度の歯周病に進行してしまっており、歯を失うという患者様も少なくありません。
一度失ってしまった歯は再生療法などの進歩した現代の歯科医学といえども元に戻すことは不可能です。そのため、常日頃から歯周病の予防をすることが大切になのはもちろんのこと、歯周病になってしまった場合も、今の状態から少しでも進行しないよう、すぐにでも歯周病治療を開始することが大切です。

歯周病は口臭の原因にも

正常なお口の匂いと違い他人に不快な気持を与えるレベルの匂いは「口臭」といわれています。研究により歯周病と口臭の間には密接な相関性があることがわかっています。
歯周病の特徴として「歯周ポケット」があり、歯周ポケットはお口の中の細菌の格好の棲み家になります。特に嫌気性の細菌は代謝の過程で「硫化水素」「メチルメルカプタン」などの物質を産生し、口臭の原因のひとつになります。

知覚過敏の原因にも

歯周病が進行し、歯茎が下がってしまうと、歯の根元の部分の象牙質が露出します。

象牙質はエナメル質とは異なり、その表面には神経に通じる無数の穴(象牙細管)が空いています。これにより知覚過敏が起きやすくなります。

 

このような症状はありませんか?

このような場合は歯周病の可能性があります。できるだけ早期に歯科医院を受診しましょう。

  • 朝起きた時に口の中がネバネバする。
  • 口臭が気になる。口臭を指摘された。
  • 歯ぐきから自然に出血する。
  • 歯がグラついている感じがする。
  • 歯ぐきがかゆい、違和感がある。
  • 歯ぐきが赤く腫れている。
  • 歯が汚れている。ザラザラしている。
  • 以前よりも歯が伸びて長くなったように見える。
  • 最近固いものが噛みきりにくくなった。
  • 歯ぐきを押すとうみが出る。